中綱湖の山桜(2024.4.25)

11 信濃大町駅⇒簗場駅 前編(追分まで)

コース

・JR信濃大町駅⇒俵町:20分

・俵町⇒追分:30分*1

 

今日は車を簗場駅付近に置き、大糸線で信濃大町駅まで戻ってからスタートします。(帰りに駅で長時間電車を待たないですむように)

 

早朝の簗場駅です。駅の紹介は簗場駅からスタートする次の区間「14 簗場駅⇒神城駅 前編」の冒頭で。

 

目の前の中綱湖が紅葉の水鏡になっていました。波もなく静かです。電車を待つ間に急いで撮影しました。

1 JR信濃大町駅

前回の終点、信濃大町駅からスタートします。

「信濃鉄道(現在のしなの鉄道とは無関係)が1916年(大正5年)7月5日に松本駅に隣接する松本市駅までを結ぶ形で開業したのが始まりである。

この鉄道建設に当たっては大町市役場が高瀬橋東詰から大町駅までの線路用地全てと15,000円を寄付するなどの支援を行った。

開業前は大町から松本まで一泊二日必要とされていたことから、この開通は当地に大きな変化をもたらすことになった。」*2

また、「大町駅は2代目であり、初代は仏崎駅(廃止)だった。2010年(平成26年)には駅舎が山小屋風に改装された。」とのこと。

 

大町駅から「博物館通り」にある桝形へ向かって北へ進みます。本通り(駅前通り)ではなく、一本東の通りです。

 

五日町にパチンコ屋さんの看板がありました。大町は黒部ダム工事(1956着工~1963年完成)の頃、とても賑やかな街だったそうです。その頃の名残りでしょうか。

 

グーグルマップには「塩の道通り」という表示があります。通りに入ってみましたが、特に史跡などは見当たりませんでした。

きれいに石畳が敷かれて、新しい街づくりがなされている場所のようです。

2 桝形・塩の道ちょうじや

「博物館通り」に着きました。この交差点と、左に曲がって150mほど先の本通り(県道474号)との交差点で桝形を形成していたそうです。*3

二つの曲がり角の間に「塩の道ちょうじや」*4があります。「博物館通り」はかつて「塩の道博物館」と呼ばれていた「塩の道ちょうじや」にちなんでいるようです。

「江戸時代の庄屋で、塩問屋を営んだ平林家の建物を利用した館内に、牛方や歩荷の運搬道具、旅装や弁当箱、生活道具などを展示」*5

「流鏑馬会館」も併設されていて見どころが多く、時間がかかりそうなので後日改めて見学したいと思います。

博物館通りと駅前通り(県道474号)との交差点です。桝形の二つ目の角。写真中央に「塩の道ちょうじや」さんの前の樹木が見えます。

3 いーずら大町特産館*6

桝形の隣にあります。

地酒、銘菓、工芸品など、大町の特産品がそろっていますので、お土産を探すならここ。

「いーずら」とは「大町弁で『良いでしょう』という意味で、いまでも使われている方言」*7とのこと。

大町宿

桝形を通り抜けるとかつての大町宿に入ります。

「鎌倉時代初期に、安曇郡一帯を治めた仁科氏の天正寺館を中心として、京に倣った町割りがなされ、三日町、五日町、六日町、八日町、九日町、十日町など定期市が立つ市場町が形成された。
戦国時代の武田氏の統治を経て、江戸時代には千国街道の中心地として栄えた。塩や海産物を扱う問屋や中馬荷継問屋があり、安曇地方で栽培された煙草や麻の集散地でもあった。

糸魚川の信州問屋との交易は盛んで、毎年2000駄以上が大町を経由した。大町宿以北は牛方、南は馬方による輸送が盛んであった」*8

4 女清水と男清水

いーずら大町特産館さんから北へ130mほど。

塩入家具店前*9に「女清水」と表示された水飲み場がありました。お花が飾られ、きれいに手入れされています。

道路の反対側にも同じような水場があります。(下の写真中央、見えにくくてすみません。)

郷土料理のお店「創舎 わちがい」*10さんの入り口(元は大庄屋栗林家の屋敷*11)にあります。

こちらは「男清水」と書かれています。

「大町には『水』にまつわる話があり、名づけて『女清水と男清水』の物語といいます。昔のこと、町の中央を南北に割って走る通りの東西で、人々の飲む水が違っていて、東側は東山の居谷里という池の湧水を、西側は北アルプス白沢の湧水を使っていました。

ところが東の集落では女の子ばかりが、また、西の集落では男の子ばかりが生まれてくるのです。いつしか人々は、居谷里の水を女清水(おんなみず)、白沢の水を男清水(おとこみず)と呼ぶようになったといいます。
 困った人々は町の真ん中に川を作り、両方の水をひとつに合わせ流すことにしたのだそうです。それからは、更においしくなった水の流れる川の両側で、人々は幸せに暮らすようになったとのことです。めでたし、めでたし。」*12

ふと思ったのですが、これは昔々の水争いと和解の象徴、そして大事な教訓を後世に伝えるお話かもしれません。勝手な妄想ですが…。

 

両方の清水を飲んでみましたが、どちらもすっきりした綺麗なお水でした。

なお、女清水・男清水を飲める場所は千国街道沿いに何ヶ所かありましたが、どこも大切に管理されていました。

5 御菓子司 柴田*13

「わちがい」さんのお隣にあります。

塩の道にちなんだお菓子があるそうですが、この日はお休みでした。(写真は後日撮影)

でも「いーずら大町特産館」*14で買うことができましたので、次の記事「12 信濃大町駅⇒簗場駅 後編(追分から)」末尾の「今日のお土産」で紹介します。

柴田さんのアーケードの上の壁にはライチョウと山々。遠目ですが、鉄平石をタイルのように使って描いているように見えます。岳都・大町らしいですね。

6 庵寓舎・麻倉*15

「わちがい」さんから100mほど進むと「庵寓舎」(豪商伊藤重右衛門の居宅跡と麻倉)があります。

居宅跡は現在、アートギャラリー「麻倉」*16などの観光資源として活用されているようです。

 

次の信号を左(西)へ曲がると、巨大な土蔵があります。

こちらが麻倉の外観だと思います。かつてはこの蔵から麻が千国街道を通って糸魚川に運ばれ、漁師の網の材料になったのでしょう。

7 市野屋「金襴黒部」*17

「庵寓舎」の道路向かい側に「金蘭黒部」の酒樽が積まれています。

創業1865年(慶応元年)の酒蔵「市野屋」*18さんです。

大町には千国街道沿いに酒蔵3軒、ブルワリー1軒の合計4軒もあります。それぞれ立ち寄っていたら「油売り」どころではありません。

酒蔵巡り?はあとのお楽しみにして、今日の目的地、簗場駅を目指します。

8 北アルプスブルワリー*19

麻倉近くの信号の北です。

公式サイトには「うまい水でつくったビールはうまいに決まっている!北アルプスの美味しい水で造ったクラフトビール」*20と書いてあります!

9 横川商店*21

北アルプスブルワリーの近所にあります。

地酒の品揃えの素晴らしいお酒屋さん*22です。他所ではなかなかお目にかかれない缶詰や乾き物もたくさんあります。勤務先が近かったときは何度か立ち寄りました。

まだ開店前なので、今日は吸い込まれずに通過しました。

10 薄井商店「白馬錦」*23

横川商店さんの道路向かい側にありますが、入口はもう一本東の通りにあります。

「創業明治39年。銘峰白馬三山にちなんで『白馬錦』と銘名しました」*24とのこと。

11 「一木宮坂商店」の看板*25

横川商店さんから北へ250m。「だんご三兄弟」(古いネタですみません)のような看板がありました。

下から「白馬錦」「金襴黒部」。一番上は斜めになっていますが、縦に大きく「大國」、横に小さく「北安」(ほくあん)、つまり「北安大國」です。

大町三蔵の代表銘柄が兄弟のように仲良く揃った可愛らしい看板です。

12 北安醸造「北安大國」*26

「だんご三兄弟」の看板から150mほど北の交差点を右(東)へ入ったところにあります。

「大正12年、塩の道千国街道と善光寺へ通ずる街道の分岐に鎮座する七尺にも及ぶ大黒天に肖り『大國正宗(だいこくまさむね)』と銘じて清酒製造開始」*27

 

薄井商店にも北安醸造にも立ち寄らず、やっと大町の酒蔵ゾーンを通過しました。大町は「岳都」といわれますが、「酒都」とも言えそうです。

大町三蔵は帰りに時間があれば立ち寄りたいと思います。

13  店先の大黒天*28

大黒天が店先(倉庫?)に鎮座していました。

その名も「だいこく食品」という食品会社だそうです。

大町宿北入口の大黒天はもうすぐです。

14 庚申塔道標*29

北安醸造へ入る街角から約250ⅿ。

写真中央の左が庚申塔道標、右は石仏です。

「大町市街北端の『追分』に立つ。庚申塔を兼ねたもので、『右 善光寺街道』『左 越後道』と刻む。延享元年(1744)の建立。善光寺まで約50㎞」*30

 

「右 善光寺街道」は読めましたが「左 越後道」は読み取れませんでした。

15 大黒天*31

庚申塔道標のすぐ向こうに大きな大黒天が見えます。

ここにも「女清水・男清水」と案内板があります。(写真左端)

こちらの大黒天は嘉永5年(1852)に高遠の石工によって造られたそうです。

高遠石工については「守屋貞治を頂点とするノミの冴えは、いくつもの石工集団を育て、その足跡は信州全域、隣接の諸国から中京・関西の地にまで及んだ。

『高遠』としっかり彫り込むことに誇りがあったのではなかろうか。」*32といわれています。 

 

大黒天を過ぎると、後立山連峰の峰々との距離がだいぶ近くなったように感じます。左から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳…と続きます。

16 若一王子神社*33

大黒天から150ⅿほどで若一王子神社(にゃくいちおうじじんじゃ)*34の参道入口に着きます。

「奥社は蓮華岳山頂に鎮座」*35とのことですが、その蓮華岳が鳥居の間にわずかに顔をのぞかせています。

三重塔

境内に入ると、まず均整の取れた美しい三重塔(県宝)に目を奪われました。

「三重塔は高さ約20mで江戸中期の造営。松本糸魚川間で唯一の層塔(県宝)」*36

拝殿・観音堂

正面が拝殿、その奥に本殿(国重文)があります。右の茅葺屋根の建物は観音堂(県宝)です。

この境内で毎年7月第4日曜日に「流鏑馬神事」(県無形民俗文化財)が行われます。

「大町子供流鏑馬は鎌倉の鶴岡八幡宮、京都の賀茂神社と共に、わが国の三大流鏑馬の一つとして名高く、仁科氏によって伝承されてきた古い伝統と由緒を誇っています」*37

神仏習合なので鳥居や拝殿と三重塔が並んでいますが、なかなか他では見られない姿かと思います。

鳥居の近くには石造物群もありました。

 

「『王子社地絵図面』(寛政2年)に参道入口の道(現国道)を『大海道(かいどう)』とし、神社西の道を『千国海道行』として迂回路としている。」*38

「現国道」とある道は、現在は県道31号となっています。そして国道は現在、西側を通るようになっています。

 

神社の西側に出て「千国海道行」の方向へと(と言ってもよいのかな?)国道148号を進みます。

国道148号の信号「俵町」からの山々です。

17 借馬の大黒天*39

俵町の信号から北へ700ⅿほどで信号「南借馬」へ。そこからさらに150mほど。

背景は鹿島槍ヶ岳の双耳峰。

 

国道から写真の大黒天の後ろの道へ入り、静御前従者の墓へ向かいます。

18 静御前従者の墓

大黒天から400mほど。道祖神を祀ってある分かれ道があります。地図で見ると、三角形のロータリーのような場所です。

写真の右側の道を用水路沿いに100ⅿほど歩くと、右側に墓地が見えてきますので、そちらへ進みます。

(私は間違えて写真の左の道へ進んだり、墓地の方へ曲がらずに直進したりで、大きく時間をロスしました。)

墓地の道路側に「静御前従者の墓」があります。

「源義経の後を追って奥州への道中、大町に来たという伝説が残る。この墓はその従者の墓。

墓碑に文治5年(1189)とあるが、江戸末期に建てたもの。

美麻村大塩(古称は「おおしょう」)を奥州と聞き間違え、大塩に到着した時大変落胆したと伝える。」*40

立札には「静御前のの墓」と書いてあります。源義経の妻ともなれば、その母親といえども従者扱いのようです。「静御前の母の墓」としている書物もあります。*41

 

なお、大町市美麻には「静の桜」という民話*42が伝わっています。

「源義経の後を追って奥州へ向かう静御前が、美麻の大塩で倒れ、力尽きて死んでしまった。『静の桜』は静御前の杖が根付いたものといわれる。」

この民話には、静御前の母「磯ノ禅尼」(いそのぜんに)が登場します。すると、この墓は磯ノ禅尼の墓ということになりそうです。

なお、静御前の墓と伝わるところは全国各地にあるそうです。

 

大きな、とても大きな蓮華岳。

19 追分

静御前従者の墓から道なりに北へ800ⅿほど。

「追分」と思われる分かれ道がありました。案内板などは見当たりませんが…。

街道はここで木崎湖の西側と東側に分かれます。「左は『湖西道(南平道)』、右は『湖東道(稲尾道)』」*43

今回は右の湖東道を歩きます。湖西道もいつか歩きたいものです。

 

「12 信濃大町駅⇒簗場駅 後編(追分から)」へ続く

*1:府川公広(2009).古道 塩の道 ほおずき書籍

*2:信濃大町駅 - Wikipedia

*3:府川公広(2009).古道 塩の道 ほおずき書籍

*4:塩の道ちょうじや・流鏑馬会館 - Google マップ

*5:府川公広(2009).古道 塩の道 ほおずき書籍

*6:いーずら大町特産館 - Google マップ

*7:いーずら大町特産館 (iizura.jp)

*8:大町宿 - Wikipedia

*9:塩入家具店前水場(女清水) - Google マップ

*10:創舎 わちがい - Google マップ

*11:創舎わちがい | 長野県大町市の郷土料理 Local Restaurant in Nagano (wachigai.com)

*12:大町のうまい水「男清水女清水」の物語 | 大町市公式サイト (city.omachi.nagano.jp)

*13:御菓子司 柴田 - Google マップ

*14:いーずら大町特産館 - Google マップ

*15:大町市まちなか文化財まち歩きマップ「中心市街地の歴史をめぐる」 (arcgis.com)

*16:麻倉(あさぐら)Arts&Crafts - Google マップ

*17:市野屋​ - Google マップ

*18:RYUSUISEN 醸造元 | 株式会社市野屋オフィシャルサイト (ichinoya.com)

*19:北アルプスブルワリー - Google マップ

*20:北アルプスブルワリー公式サイト | 【信州長野】北アルプスの恵みで造るクラフトビール (n-alps.beer)

*21:横川商店 - Google マップ

*22:横川商店 (yokokawasyoten.jp)

*23:(株)薄井商店 - Google マップ

*24:【白馬錦】長野県大町市の酒蔵 株式会社薄井商店 | 信州の地酒 日本酒 (hakubanishiki.co.jp)

*25:一木宮坂商店 - Google マップ

*26:北安醸造 - Google マップ

*27:北安大國 |北アルプスと清流の恵み 真心で包む 北安醸造株式会社 (hokuan.co.jp)

*28:だいこく食品 - Google マップ

*29:街道追分跡 - Google マップ

*30:田中元二(1997).塩の道千国街道 詳細地図 古道案内‐歩く人のために‐ 白馬小谷研究社

*31:大黒天 - Google マップ

*32:田中欣一(2012).塩の道 歩けば旅人 千国街道をゆく 信濃毎日新聞社

*33:若一王子神社 - Google マップ

*34:信州仁科の里 若一王子神社 | 長野県大町市 (nyakuichi.jp)

*35:田中元二(1997).塩の道千国街道 詳細地図 古道案内‐歩く人のために‐ 白馬小谷研究社

*36:田中元二(1997).塩の道千国街道 詳細地図 古道案内‐歩く人のために‐ 白馬小谷研究社

*37:信州仁科の里 若一王子神社 | 長野県大町市 (nyakuichi.jp) 

*38:田中元二(1997).塩の道千国街道 詳細地図 古道案内‐歩く人のために‐ 白馬小谷研究社

*39:借馬の大黒天 - Google マップ

*40:田中元二(1997).塩の道千国街道 詳細地図 古道案内‐歩く人のために‐ 白馬小谷研究社

*41:大町民話の里づくり もんぺの会制作発行 相澤亮平編著(2019).改訂新版 語り継ぐ大町の伝説 <全384話> 有限会社 塩原書店

*42:あづみ野児童文学会編(2007).あづみ野 大町の民話 美麻・八坂編 発売元 塩原書店

*43:田中元二(1997).塩の道千国街道 詳細地図 古道案内‐歩く人のために‐ 白馬小谷研究社