中綱湖の山桜(2024.4.25)

歩き始める前に

1 塩の道を歩きたい!

① 命をつなぐ塩

「塩は代用のきかない、地球上の唯一無二の食品であり‥

細胞の内と外との体液の圧力(浸透圧)を調整しバランスを一定に保つ、脳からの命令を電気信号で神経細胞へ伝えるなど、生命に直結する大切な働きをしている。」*1といいます。

私のご先祖様は安曇野の片隅で長らく農業を営んできました。ご先祖様たちの命をつないできた塩は、塩の道を通って日本海方面から運ばれてきたものです。今、私が存在しているのは塩の道のお陰です。

② 道は未知

塩の道の存在を知ったのは、四十数年前に『塩の道・千国街道』(亀井千歩子著 1980年 東京新聞出版局)を読んでからです。ここに書かれているエピソードの一つ一つに興味を惹かれ、太古から塩の道が存在し、現在も生き続けていることに驚かされました。

「道は人間とともに等しく古いが、その踏み跡がなくなれば道でなくなる。しかし、人が存在する限り、道は再びよみがえってくる。千国街道の歴史を思うとき、道は『未知』へ続いていることを教えてくれるのである。」という著者の言葉が心に残り、いつか自分も千国街道に踏み跡を残したいものだと思いました。

③ 足と頭、そして感動

塩の道を歩けるのもあと何年あるかなぁという年齢(アラコキ)になりました。無理のない範囲で目的地を定め、ちょっとした好奇心を満足させながら、見知らぬ道を歩いてみたいと思います。驚くこと、感心すること、知らなかったことに、たくさん出会えることを期待して。

 

『塩の道・千国街道』を読んでから油を売って四十数年。ようやく未知なる塩の道を少しずつ歩きはじめました。

まずは千国街道、その後は千国古道、西廻り、そして塩尻まで歩けたら最高にうれしいです。

2 地図を頼りに

① 『塩の道千国街道 詳細地図 古道案内ー歩く人のために‐』田中元二著 1997年 白馬小谷研究社

国土地理院の2万5千分1地形図にコースやポイントが記入してあります。「詳細地図」というだけあって本当に詳細です。本通りだけでなく枝道や二筋道、通れなくなった道なども記されています。ポイントの数が多く解説も詳しいのでとても参考になります。

道に迷いそうな場所では、同じように地理院地図を使っているYAMAP*2(無料版)で自分の現在位置を確かめ、詳細地図と見比べながら歩いています。

② 『古道 塩の道』別府公広著 2009年 ほおずき書籍

地図が比較的新しいので、現在の道路状況を反映したコースが記されています。道に迷うことが少ないと思い、コースの設定は主にこの地図を参考にしています。

コースタイムも目安として役に立ちます。実際には歩くのが遅いうえに、写真を撮ったり、寄り道をしたりで、ずっと時間がかかりますが…。

さらに花、巨木、雪形のページもあり、塩の道歩きの楽しみを拡げてもらえます。

③ 『千国街道 塩の道を歩く』 小谷村観光協会

A4サイズで8枚分のパンフレットのような地図。村内の千国街道4コースと千国古道4コースについて記されており、見やすく分かりやすく内容が濃く、とてもよくできていると思います。

分かりにくい場所は拡大図があるのも助かります。

この先、小谷村のエリアに入ったらこの地図が大いに役立ちそうです。

3 足ごしらえ

歩荷に草鞋、牛にガニ、仁科街道油売りにはアーチパワーアシスト!

「歩荷」は「ぼっか」さん、「ガニ」は藁で作った牛の沓、「仁科街道油売り」は私のニックネーム。

「アーチパワーアシスト」はワークマンで販売している靴下です。

立体的に作られており、足にぴったりフィットしてシワができません。(普通の靴下でシワができると足の裏が痛くなります。)ジョギング用のソックスに比べてお値段もリーズナブル。

靴選びも重要ですが、今までのところ(松本⇒白馬)舗装道路が多いので、軽くてクッションの厚いジョギングシューズで困ることなく歩けています。

4 JR大糸線は便利

塩の道と大糸線の線路は寄り添うように走っています。また、大糸線の各駅にはたいてい無料の駐車スペースがあります。

そこで、目的地近くの駅に車を止めておき、列車で出発地近くの駅まで戻ってから歩き始めるようにしました。

大糸線と車を併用すると列車待ちの時間が短縮でき、帰りの行動範囲も広がります。

5 今日のお土産・今夜のお酒

ご機嫌よく「行ってらっしゃい」「お帰り」と言ってもらうために、お土産は欠かせません。見え透いた常套手段ですが…。

お土産は各区間の後編の末尾「今日のお土産」で紹介します。

 

塩の道沿道には、この地域の風土の中で長年醸し続けている酒蔵や、個性豊かなブルワリーがいくつもあります。

こうした地酒や地ビールを飲みながら、下手な写真も眺めながら、この日のコースをゆっくり振り返ると、道歩きの味わいや満足感がさらに深まる気がします。

お酒はお土産と同じように「今夜のお酒」で紹介します。